35歳フリーターの1日

能力なし、やる気なし、金なし
ないない尽くしの35歳フリーターに今日も朝がやってくる。

今回はそんな35歳フリーターの1日を紹介しよう。

AM6時半
35歳フリーター起床。
朝起きるのがつらい。
起きた瞬間、1日が始まったことに絶望する。


AM7時
35歳フリーター、朝ごはんを食べる。
朝ごはんと言っても、誰もご飯を作ってくれないし、金もないので近所のスーパーで買った安いパンを胃に詰め込む。
仏頂面でただただパンを胃に詰め込む姿は見ていてあまりにも悲しい。

AM7時半
35歳フリーター、出勤。
髪はボサボサ、靴はボロボロ、服はシワシワ。
すれ違うキラキラした高校生を光とするなら、35歳フリーターは闇である。

AM8時半
35歳フリーター、業務開始。
35歳フリーターは非正規職員として事務作業をしている。
業務開始後、早速、年下の上司に呼ばれる。

35歳フリーターはいつもこの上司に詰められ、叱られている。
昨日作った資料がミスだらけだったみたいだ。
35歳フリーターは叱られ慣れているからあまり気にしない。
頭を空っぽにして上司の指示を半ば聞き流している。
そもそも、35歳フリーターに仕事の熱意はない。
仕事なんてどうでもいいのだ。
誤字がなんだ。結論がわかりにくいのがなんだ。どうでもいい。どうでもいい。
もはや、全てがどうでもいい。
35歳フリーターの頭に浮かぶ「退職」の2文字。
35歳フリーターは所謂、無敵の人である。
独りで暮らしていて、守るべき家族もいない。
貯金も地位もない。
いつか全てを壊してやりたい。
35歳フリーターの心の底にはそんな思いがある。

AM12時
35歳フリーター、昼飯を食べに行く。
職場から近いスーパーで買った安い飯を胃に詰め込む。
誰とも話す事なく、1人で胃に飯を詰め込む。
飯ではなくて餌だよこんなもん。

餌を詰め込んだ後に、35歳フリーターに趣味の時間がやってくる。
35歳フリーターは匿名SNSで人間にマウントを取るのが趣味である。
普段はマウントを取られる側でしかないから。
匿名SNSはいくらでも偽装ができて、どんな人物にもなりきれるので、35歳フリーターは好んで使っている。
ちなみに35歳フリーターは、24歳ベンチャー企業社長という設定で匿名SNSをやっている。
昼休みにマウントを取る投稿をすることが35歳フリーターの楽しみなのである。

PM3時
35歳フリーターは電話口で客を怒らせてしまった。
キレる客。
35歳フリーターはいつも電話で人を怒らせてしまう。
35歳フリーターは電話対応がヘタクソだった。
それでも、35歳フリーターはあくまで悪いのは自分ではなく客だと言い張る。
そう信じている。35歳フリーターだけがそう信じている。

PM5時
35歳フリーター、退勤。
「非正規は気楽でいいよなぁ!」と皮肉を浴びせられる35歳フリーター。
初めは心が痛んだが、今となっては慣れてしまった。
35歳フリーターは仕事なんかどうでもいいのだ。
職場にいるのは本当の自分じゃない。
自分の形をした他人だ。
そう思うことにしている。

PM8時
能力なし、金なし、やる気なしの35歳フリーターは無駄に性欲だけはある。
ヤレる女を探すために必死にマッチングアプリで女を漁る。
「こいつ、派手で頭が悪そうだな……こいつは、男を年収で判断しそうな顔だな……こいつはババアじゃねぇか!」
女を批評してばかりの35歳フリーター。
今までマッチングアプリで遊んだ女はいるにはいるのだが、一度きりでいつも終わる。
二度目に繋がったことは一度もない。
マッチングアプリをやるような女は揃いも揃って真剣に男と向き合わないクズばかりだ。
35歳フリーターはグチグチと言う。
自分を省みることはしない。

PM11時
35歳フリーター、就寝
カビ臭さとおっさん臭が染み付いた黄ばんだ布団に体を横たえる。
「今日も非生産的でクソみたいな1日だった」
35歳フリーターは、そんなことを思いながら眠りに落ちていく。
クソみたいな1日の原因を考えることなく眠りに落ちていく。
誰にも必要とされない35歳フリーターの人生はこれからも続いていく。

※この話はフィクションです。特定の人物の話ではありません。