【クソ居酒屋】7年ぶりに元バイト先に足を運んだ
昔の思い出がある場所に行って、ノスタルジックな雰囲気に浸りたくなる時ってあるよね??
今日はまさにそんな気分だったから電車を乗り継いで、7年前、人生初のアルバイトをした居酒屋に行くことにした。
店の外観は昔と全く変わっていない。
中に入ると、コロナ対策で所々に衝立が置かれているが内装はほぼそのままで僕は一瞬で7年前にタイムスリップした。
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7年前の5月……
僕は大学生になったばかりだった。
親から仕送りを貰わずに奨学金を借りて大学に行くことを選んだ僕はアルバイトをしないとマズいと思い、とにかくすぐにできるアルバイトを探して、見付けたのがこの居酒屋だった。
時給も悪くなくて当時の家からもわりと近くて悪くないなと思った。
まあ、それは間違いだということに気付くのはそう時間はかからなかったけど。
その居酒屋でよくシフトが被っていたメンバーがまずヤバかった。
店長:鬼のようなおばさん。髪は赤色。
声が酒焼けしている。よくキレる。
キッチンチーフ:オールバック金髪のおじさん。常にタバコを吸ってた。とにかく口が悪い。
ヒゲ先輩:ヒゲを生やしたガタイの良い先輩。会うたびに肩パンをしてくる典型的なDQN。肩パンをリアルでしてくる人間、後にも先にもヒゲ先輩しか知らない。
ヤクザ先輩:ヒゲ先輩の友達。パッと見ヤクザ。こいつはマジでやべえ。人の心がない。
この4人とよくシフトが被っていた。
僕と同じタイミングでバイトを始めたもう1人の男の子がいた。
オドオドしていたからオドくんとする。
僕はオドくんともたまにシフトが被ってた。
バイト先でまともに話せる人間はオドくんくらいしかいなかった。
人生初めてのアルバイトで働くということが全く分からない僕は時にはミスをやらかして鬼店長やヒゲ先輩から怒られていた。
だけど、それ以上にオドくんは叱られていた。
ある日、オドくんが不思議な時間に帰っていった。
僕は店長に「あの……オドくんはもう上がりでしたっけ?」と聞くと
「ああ、オドは何回言ってもミスが治らないからね、もういらないって言ったんだよ。アンタもそうなりたくなかったら分かってるね?」と軽く話す店長。
とてもショックだった。
突然、オドくんがクビにされたこと。
次はお前だとばかりに言う店長。
僕がバイトを始めて1ヶ月くらいの出来事だった。
時給が良いバイトだからクビにはなりたくないと思って、鬼店長の怒声やヒゲ先輩の肩パンに耐えて極力ミスをしないように働いていた。
オドくんがいなくなった代わりだろうか、新人の女の子がバイトに入ってきた。
明らかにふざけた態度のデブ女だった。
休憩の時間を変わってほしいとお願いされて承諾したら
「ありがとうございますぅ〜♡優しいんですね〜♡♡」とか甘えた声を出すデブ女。
いや、でもまだ悪い先輩たちよりは仲良くできるのか……?と思ったけど、そのデブ女は1週間でバックれた。
また人がいなくなった。
「バックれはよくある。」そんなことを鬼店長は言ってたけど、バックれられる原因考えたことあるか??
ぜってぇお前とヤベェ先輩たちのせいだぞ!!!!と言いたかったけど僕は我慢した。
そんな中、バイトを始めて2ヶ月くらい経つ頃。決定的な事件が起きた。
僕はヤクザ先輩に目を付けられてしまう。
ヤクザ先輩はその時、人を叩いたり、電気を流したりするオモチャにハマっていた。
仕事中の僕を執拗に殴ったり、電気を流したりしてゲラゲラ笑っていた。
かなりの痛みだった。
殴り返したいけど見た目も怖いし何よりチカラで勝負しても勝てる気がしなかった。
僕は弱い人間だ。あの時、文句の1つでも言ってやればよかったんだ。
そして、バイトに行くのがどんどん嫌になって、ある日、何かが切れて、鬼店長に制服を叩きつけて
「もう辞めます。お世話になりました。じゃ」と言って辞めてきた。
それ以来、あの店には行ってない。
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随分と昔話が長くなってしまったけど、本題に戻る。
そんなクソみたいなバイト先でも1つだけ良いことがあった。
まかないで好きなメニューが食べられるんだけど、その店のラーメンだけは美味しかった。
狭くて汚い休憩室で夢中になって賄いのラーメンを食べていた。
メニュー表を見ると、ラーメンは今も残っていたから迷わずにそれを注文した。
店員さんに今の店長の名前を聞いたけど、知らない人だった。
そりゃそうだ。あれから7年も経っているんだ、変わってるに決まってる。
しばらくするとラーメンが運ばれてきた。
懐かしさと期待でラーメンを口に運んだ。
だけど、一口食べて気持ちが冷めた。
「あれ……別に美味しくないな……◯◯のお店のラーメンとか△△のラーメンの方が美味しいな……」
確かに昔食べた味のラーメンではある。
ただ、田舎から出てきてろくにお店のラーメンなんか食べたことなかった18のガキんちょと、それから7年間いろんな場所でラーメンを食べてきた今の僕。
この7年間で美味しいお店をたくさん知ってしまった。
7年という時間は人を変えるのには十分な時間だ。
思い出の味が色褪せてしまったように感じられたけど、これが現実で、人は否応なく変わるんだなと思った。
食べ終えて、会計を済ませて店を出た。
ノスタルジックな気分はどこかに消え失せて今の現実を受け入れる気持ちが整った。
また明日からもこの救いのない現実世界で生きていくしかない。