Twitterプロおじさん密着取材!

レポーター「こんにちは。今日はTwitterプロおじさんに密着してみるという企画をやっていきます。私は今、Twitterプロおじさんの家であるアパート、お世辞にも綺麗とは言えないアパートの前に来ております。」

 

レポーター「それでは、Twitterプロおじさんの部屋に行こうと思います。うわ!二階への階段クッソボロ!壊れそうですねぇ!!」ギシギシ!

 

レポーター「はい、ピンポンを押しますね!」ピンポーーン!ガチャ

 

Twitterプロおじさん「はい。」

 

出てきたのは特に特徴もない、40代くらいの冴えないおっさんだった。

 

 

レポーター「あぁ、どうも!Twitterプロおじさんですか?はじめまして。今日は密着取材させてもらいます。よろしくおねがいします。」

 

Twitterプロおじさん「はい。」

 

レポーター「おじゃましますね。うわぁ!これは六畳一間でカップ麺のゴミが散らかっていて足の踏み場もない。ポイント高いですね〜!Twitterプロおじさんだと長いのでツイプロおじさんとお呼びして良いですか?」

 

ツイプロおじさん「はぁ……別にいいですよ。」

 

レポーター「携帯をものすごい勢いでタップしてますが今、何をされているんですか?」

 

ツイプロおじさん「あぁ、今はですね、Twitterでバズってるツイートの中で昔のネタを引っ張ってきてるやつに片っ端から「それ、◯年前のパクツイですよね?」とリプライしてるところですね。

あいつらはツイートをバズらせるために昔のネタを引っ張ってくることが多いので私がそうやって突き付けてるんですよ。「お前のツイートはパクツイに過ぎない!」ってね。」

 

レポーター「なるほど、昔のネタのパクツイかどうかってすぐ分かるんですか?」

 

ツイプロおじさん「長くTwitterをやってると大体は分かりますね。あとは明らかな作り話のツイートもわかりますね。たくさん見てきたので。」

 

レポーター「ちなみにTwitterは何年ほどやっているんですか?」

 

ツイプロおじさん「そうですね……10年くらいになりますかね」

 

レポーター「10年!?!?10年もTwitterを!?!?毎日欠かさず!?!?さすがツイプロおじさん!!この経験がパクツイを見破ってるんですね!」

 

ツイプロおじさん「それだけじゃないんですよ。Twitterの承認欲求にまみれた人間たちの中にはTwitterからではなく、昔の2ちゃんねるの名文もパクってツイートする奴もいるんですよ。

自分が今考えました〜!みたいな感じで。Twitterからパクらなければバレる確率は下がりますからね。まあ、そうは言っても私はTwitterの前は2ちゃんねるにどっぷりだったもので、ある程度の有名コピペなら大抵は分かります。

だからリプライで「貴方のツイートは2ちゃんねるのパクリです」って言えるんです。」

 

レポーター「随分とネット歴が長いんですね!」

 

ツイプロおじさんはTwitterだけではなく、2ちゃんねるにも精通しているガチのネットプロだった。

Twitter2ちゃんねる歴を合わせると20年くらいになるとのこと。

そんなツイプロおじさんにネット以外の私生活を聞いてみることにした。

 

レポーター「あの、すみません。ちょっと聞きたいんですけど、彼女とかはいますか?」

 

ツイプロおじさん「彼女?そんなものはできたことないねぇ……」

 

レポーター「失礼ですが、お仕事は?」

 

ツイプロおじさん「Twitterプロおじさんとして、Twitterを監視してパクツイでバズってるやつらに「お前のツイートはパクリだ!」と突きつけたり、自分でもツイートしたりして過ごしてますよ。まあ、収入としては生活保護で生きてます。」

 

レポーター「そうですか……」

 

19時、そろそろ晩御飯という時間になったときにツイプロおじさんは立ち上がった。

 

ツイプロおじさん「ご飯を食べに行きます。今日は貴方達がお金を出してくれるんですよね?」

 

レポーター「はい、密着取材にご協力頂いてるのでそのくらいはさせていただきます。何が食べたいですか?」

 

ツイプロおじさん「焼肉!」

 

そう言って、我々は焼肉屋へと向かった。

 

レポーター「ところでなぜ焼肉なんですか?」

 

ツイプロおじさん「それはね、焼肉の写真は伸びるからですよ。」

 

レポーター「焼肉の写真は伸びる?」

 

ツイプロおじさん「ええ、そうです。焼肉の写真だとファボ数……いえ、今はイイねですか、イイね数が稼げるんですよ。これは長年の経験で分かっています。」パシャパシャ!

 

そう言うとツイプロおじさんは写真をたくさん撮って、Twitterにあげる写真を選別し始めた。

おじさんは焼肉が食べたかったんじゃないのかな?

 

21時、帰宅。

レポーター「さっきの焼肉の写真、ツイートしてませんでしたね?辞めたんですか?」

 

ツイプロおじさん「あれは意図してツイートしてなかったんですよ。ツイートには伸びやすい時間帯があります。あの時間よりも少し遅い今くらいの時間が1番いいねを稼ぎやすいんです。これを私はゴールデンタイムと呼んでるんですが、ゴールデンタイムに渾身のツイートを持ってくるのが大切です。」

 

レポーター「なるほど、そういうことでしたか。ちなみにおじさんは10年Twitterやってきて最高でどのくらい伸びたことがあるんですか?」

 

ツイプロおじさん「……200いいねくらいですね」

 

レポーター「ちなみにフォロワーの数は?」

 

ツイプロおじさん「50人ですが……」

 

ツイプロおじさんはそしてTwitter世界へと戻っていった。

 

23時

 

レポーター「あの、ツイプロおじさん、さっきの焼肉ツイートですが、2いいねでしたね」

 

ツイプロおじさん「……」

 

レポーター「Twitterの世界は厳しいですね。」

 

ツイプロおじさん「……」


レポーター「ツイプロおじさんはどういう時にTwitterをやってて楽しいって思うんですか?」 


ツイプロおじさん「思わない……」


レポーター「え?」


ツイプロおじさん「Twitterなんか、やってても、楽しいとは、思わないです。

ほんとはこんなことばかりやってる自分に嫌気がさしてるし、早くTwitterやめたいんですよ」


レポーター「ツイプロおじさん???」


ツイプロおじさん「先月、親が亡くなった。数少ない友達もみんな結婚して家庭を持ってる。私だけが……私だけがずっと独りだ。

私は長年ネットにへばりついてるからネットの知識だけは増えてパクツイを見破れるだけ。

「あっ、このツイートは2年前に見たやつだな。パクツイ野郎め!」と頭に血が上ってリプライを送った直後にいつも思うんだ。

「あぁ……私は2年前のツイートを覚えているけど自分は2年前と比べて何にも変わっちゃいない」ってね」


ツイプロおじさんの目にはいつの間にか涙が浮かんでいた。


ツイプロおじさん「10年だ、気付けば10年も大切な時間をTwitterに捧げてしまった。

得たものはネットの狭い世界だけでしか通用しない知識。何にもないのとおんなじだ。

仕事もしたことがない。人と上手く話せない。ネットの世界で大きな声をあげているだけ。産まれてこなきゃ良かったって思いながらいつも生きてるんだ。」


レポーター「ツイプロおじさん……まだ、やり直せますよ」


ツイプロおじさん「いいや、もう無理だよ。私には何にもない。もう空っぽなんだ。

今日はありがとう。本当に数年ぶりに人に話を聴いてもらえた。レポーターさんはこんなおじさんにならないようにしてくださいね。」


24時、ツイプロおじさんの家を出る。


レポーター「はい、ということでツイプロおじさんの密着取材!これにて終了です!くぅ〜疲れました!!」


レポーター「たくさん働いたし、美味しいものでも食べて帰ろっと!」



次の日、ツイプロおじさんの遺体がアパートの部屋で発見された。

警察は自殺と判断した。

ツイプロおじさんがTwitterで自殺を仄めかすツイートを深夜3時に連投しているのが分かったからだった。


結局のところ、ツイプロおじさんは死ぬ間際までTwitterに囚われ続けていたのであった。


〜終〜


※このお話はフィクションであり、実在の人物とは全く関係はございません。多分。